二仏が並び座す崇高な宝の品格。

石造宝塔は平安時代、密教の教えに基づいてつくられるようになりました。『法華経』の中の「見宝塔品(けんほうとうぼん)第十一章」に、宝塔の由来を示す次のような場面が描かれています。あるとき釈迦如来が人々に向かって法華経を説いていると、地中から突然、たくさんの宝石を散りばめた巨大な塔が出現し、中から「善哉(よいかな)、善哉(よいかな)(すばらしい!)」という大声が聞こえました。声の主は多宝如来でした。多宝如来は塔の中へ釈迦如来を招き入れて座の半分をわかち、二仏が宝塔中に並坐(びょうざ)しました。多宝如来は釈迦如来の過去の姿であり、一方の釈迦如来は娑婆(しゃば)世界(現世)の仏です。したがって宝塔内の二仏並座(にぶつびょうざ)は、釈迦如来がはるかな過去から仏であったことを示し、中心仏たる釈尊がまさに永遠の存在であることを表します。

下から方形の基礎、円形の塔身(とうしん)、笠、相輪(そうりん)という構成から成る宝塔の形式は、基本的に法華経見宝塔品を造形化したものですが、密教的にはこの塔身は大日如来(宇宙根元の本仏)とも見なされます。このため、塔身の軸部には多宝・釈迦の二仏並坐を表わすものがある一方で、四方仏の薄肉彫、五智如来を表す四方の梵字や扉型などを刻出するものがあります。

古より日本人の
積み重ねたる祈りを、
宝とす。

密教が重んじる、南天鉄塔由来の宝塔。
近江文様をまとった基礎で護るは、
塔身に笠を受け相輪を戴く一重塔。

石造美術が華をなす鎌倉期の姿と技に範を戴き、
時ととけあう古よりビシャン叩き仕上げが石の素顔を暴く。

古より日本人の積み重ねたる祈りを、宝とす。

密教が重んじる、南天鉄塔由来の宝塔。近江文様をまとった基礎で護るは、塔身に笠を受け相輪を戴く一重塔。石造美術が華をなす鎌倉期の姿と技に範を戴き、時ととけあう古よりビシャン叩き仕上げが石の素顔を暴く。